nendのSREエンジニア入門ブログ

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SREの定義と役割の概要・クラウド技術の進化とSREの重要性を解説!!


1. イントロ

1-1. SREの定義と役割の概要

SRE(Site Reliability Engineering)とは、システムの信頼性や性能、効率を維持・向上させるための技術的アプローチとしてGoogleが提唱したものです。以下が主な役割と特徴です。

  • システムの監視: サービスやシステムの健全性を継続的に監視し、障害や異常を検知します。 例: Google CloudのStackdriverやAWSのCloudWatchのようなツールを使用しての監視活動

  • インシデント管理: 障害が発生した際の迅速な対応や原因分析、再発防止策の策定。 例: PagerDutyやOpsgenieといったアラート管理ツールを用いての対応

  • リリースと変更管理: システムの変更や新機能のリリースをスムーズかつ安全に行う。 例: デプロイプロセスの自動化やカナリアリリースの導入


1-2. クラウド技術の進化とSREの重要性

クラウド技術の登場と進化は、ITインフラの運用や開発の方法を大きく変えました。以下はその進化のポイントとSREの関連性についてです。

  • スケーラビリティ: クラウドは瞬時にリソースを増減させることができるため、大規模なトラフィックや処理にも柔軟に対応可能。 例: AWSのAuto ScalingやGCPのManaged Instance Groupsを利用したスケーリング

  • グローバルな展開: クラウドサービスは世界中のリージョンやデータセンターに分散されており、グローバルなサービス提供が容易に。 例: AzureのGlobal Traffic Managerでのトラフィック分散

  • このようなクラウドの特性を最大限に活用し、同時にシステムの信頼性や性能を保つために、SREの役割は非常に重要となっています。


2. 基本的なSREのスキルと知識

1. システム設計の理解

SREはシステム全体の動作と信頼性を保証する役割を持っています。そのため、システム設計の基本的な原則やアーキテクチャの理解は不可欠です。

  • 冗長性: システムの一部が障害に遭遇した場合でも、全体が正常に動作し続ける能力。 例: マルチリージョン展開、ロードバランサーの使用など

  • スケーラビリティ: 変動するトラフィックや要求に対応できる設計。 例: マイクロサービスアーキテクチャ、オートスケーリングの適用

  • セキュリティ: システムやデータを悪意のある攻撃から守るための設計。 例: ファイアウォールの設置、暗号化の適用

2-2. プログラミング・スクリプトスキル

SREは自動化やツールの開発・カスタマイズを行うため、プログラミングやスクリプトのスキルが要求されます。

  • 自動化: 手動での運用作業を最小限にし、効率性を向上させる。 例: TerraformやAnsibleを使用したインフラのコード化

  • カスタムツールの開発: チームのニーズに合わせたツールやスクリプトの開発。 例: PythonやGoを使用した監視ツールの開発

2-3. 監視とアラートの原則

システムの健全性や性能を継続的に監視し、問題が発生した際には迅速にアラートを受け取ることが重要です。

  • 監視の範囲: システム全体をカバーする監視ポイントの設定。 例: CPU使用率、レスポンス時間、エラーレートなど

  • アラートのしきい値: 適切なしきい値を設定し、過度なアラートや逃したアラートを防ぐ。 例: 平均レスポンス時間が500msを超えた場合にアラート

2-4. インシデント管理とトラブルシューティング

システムに問題が発生した際の迅速な対応と、原因の特定・修正を行うスキルが求められます。

  • インシデントレスポンス: 問題が発生した際の即時対応とコミュニケーションの確立。 例: On-callエンジニアのローテーション、ステータスページの更新

  • トラブルシューティング: 問題の原因を特定し、修正や再発防止策を策定。 例: ログの解析、システムの診断ツールの使用


3. クラウドプラットフォームとSRE

3-1. 共通のクラウドの原則と特徴

オンデマンド自己サービス: 必要に応じてリソースを追加・削除できる。

ワイドネットワークアクセス: グローバルなアクセスが可能。

リソースのプーリング: マルチテナントモデルを使用して効率的なリソースの使用を可能にする。

迅速な弾力性: 需要に応じてスケールアップ・ダウンが可能。

測定されたサービス: 使用量に基づいて課金される。

エラスティシティ: クラウドプラットフォームは需要に応じてリソースを増減させる能力を持っています。

分散アーキテクチャ: グローバルなリージョンやゾーンに分散したデータセンターでの運用が可能。

サービス志向: 従来のハードウェアベースのリソースではなく、APIを通じてアクセスされるサービスとしてのリソース提供。

3-2. 各プラットフォーム(Azure, AWS, GCP)のSREに関する特色

  • Azure: 企業向けの強力な統合サービスとセキュリティを強調。Microsoft製品との統合が強化されている。

  • AWS: 市場のリーダーとして幅広いサービスを提供。豊富なドキュメンテーションとコミュニティが存在。

  • GCP: Googleが持つ強力なデータ解析とAIの能力を強調。シンプルな価格モデルやユーザーフレンドリーなインターフェースが特徴。


4. 各クラウドプラットフォームのツールと技術

Azure

Azure Monitor: Azureリソースの監視、パフォーマンスデータの収集、およびアラートの設定を提供。 Azure Security Center: セキュリティポリシーの適用やリスクの評価、脅威対策を提供。 Azure DevOps: コードリポジトリ、CI/CDパイプライン、アーティファクトリポジトリなど、DevOpsライフサイクル全体のツールを提供。

AWS

Amazon CloudWatch: AWSリソースとアプリケーションの監視を提供。 AWS X-Ray: アプリケーションの実行時の問題やパフォーマンスボトルネックを特定・分析。 AWS CloudTrail: AWSアカウントのアクション履歴を記録・監視。

GCP

Stackdriver: GCPリソースの監視、ロギング、トレーシングを提供。現在はGoogle Cloud Operations Suiteの一部となっている。 Google Cloud Operations Suite: GCPの監視、ロギング、トレーシング、デバッグ、そしてAPM


5. SREの実践例

5-1. SLI, SLO, SLAの定義と管理

  • SLI (Service Level Indicator): サービスの品質や健康度を示す指標。例えば、HTTPリクエストの応答時間やサービスの可用性などが考えられます。

  • SLO (Service Level Objective): SLIに関連する目標値。たとえば、HTTPリクエストの応答時間の99%が1秒未満であること、サービスの月平均可用性が99.9%であることなど。

  • SLA (Service Level Agreement): サービス提供者と顧客の間で合意されたサービスレベルの契約。SLOの達成が保証され、達成できなかった場合のペナルティや補償が含まれることが多い。

5-2. 管理の実践例:

  • SLIの定義: システムのモニタリングツールを使用して、リクエス応答時間やエラーレートなどの指標を収集します。

  • SLOの設定: 収集したデータを元に、具体的な目標値を設定します。例:「99.9%のリクエス応答時間が1秒未満であること」

  • SLAの交渉: 顧客との間で、サービスの品質に関する契約を結びます。

5-3. エラーバジェットとリリース管理

  • エラーバジェット: SLOを満たすための「余裕」や「許容範囲」。SLOが99.9%の可用性を目指す場合、エラーバジェットは0.1%となります。

5-4. リリース管理の実践例:

  • エラーバジェットの使用: リリースの頻度やサイズをエラーバジェットに基づいて調整します。 エラーバジェットが少ない場合、リリースを控えめに行ったり、リスクの少ない変更のみを適用します。

  • エラーバジェットのオーバー: エラーバジェットを超えた場合、新しいリリースを一時停止し、原因を分析して問題を解決します。

  • カオスエンジニアリングの導入 カオスエンジニアリングは、意図的にシステムに障害を起こして、その耐久性や復旧能力をテストする手法です。

5-5. カオスエンジニアリング導入の実践例:

  • スコープの定義: テストの対象となるサービスやリソースを特定します。

  • 障害の導入: 一定の時間や条件で、サービスの一部を停止したり、ネットワークの遅延を導入したりします。

  • 監視と分析: システムの挙動を監視し、期待される復旧動作や影響を確認します。

  • 結果の報告: テストの結果や発見した問題点を文書化し、チームや組織に共有します。 例: Netflixの「Chaos Monkey」は、ランダムにインスタンスを終了することで、システムの耐障害性を確認するツールです。


6. チームワークとカルチャー

6-1. SREと開発チームの協力

SREと開発チームの関係性: SRE(Site Reliability Engineering)チームと開発チームは、両者が連携することで、高いパフォーマンスと信頼性を持つサービスを提供するためのキーパートナーとなります。開発チームは新しい機能や改善を迅速にリリースすることを重視する一方、SREチームはシステムの信頼性や可用性、パフォーマンスの維持と向上を目指します。

6-2. 協力の重要性:

これらの目標は時折相反する場面がありますが、両チームが連携し、共通の目標に向かって努力することで、バランスの取れた、効果的なサービス展開が可能となります。

  • 実践例:
  • コードレビューの共有: SREはプロダクション環境にデプロイされる前のコードレビューに参加し、パフォーマンスやセキュリティの観点からのフィードバックを提供することで、問題の早期発見と修正を促進します。 定期的なミーティング: SREと開発チームは定期的にミーティングを設定し、システムの健全性、新しいリリースの計画、エラーバジェットの使用状況などを共有します。

  • ブレームレスポストモーテムの文化 ブレームレスポストモーテムの定義: 障害やインシデントが発生した後、その原因や経緯、そして今後の対策を検討する会議や文書のこと。ここでの「ブレームレス」とは、個人の責任を問うのではなく、システムやプロセスの改善点を中心に議論を進めることを指します。

6-3. 文化の重要性:

  • 学び: インシデントから学ぶことで、同じ問題の再発を防ぎ、システムの信頼性を向上させることができます。

  • 開放性: チームが安全な環境で問題を共有し、開かれた議論を行うことで、組織全体の成長と進化が促進されます。

  • 実践例:

Googleや多くのテクノロジー企業は、ブレームレスポストモーテムを文化として導入しており、障害が発生した際にはすぐにポストモーテムミーティングを開催し、結果を組織全体と共有しています。 継続的な学びと成長の重要性

  • 継続的な学びとは: 新しい知識やスキルを習得し、現在の職務や役割に適用すること。また、未来の可能性や機会に対応するための準備としても行われます。

  • 重要性: 技術の進化: テクノロジーの領域では、新しい技術や手法が日々登場しています。これに追従し、最新の知識を持っていることは、競争力を維持し向上させるために不可欠です。 チームの協力: 互いに知識や経験を共有することで、チーム全体の能力や効果が向上します。 実践例:

  • 技術勉強会: 定期的に技術勉強会を開催し、新しい技術やツールについて学ぶ。 外部のカンファレンスやセミナーへの参加: 最新のトレンドや技術を学び、 他の組織や専門家とのネットワークを築く。


7. キャリアと将来性

7.-1 SREとしてのキャリアパス

  • 初級 SRE: 新しいSREは、通常、経験豊富なメンバーのもとでオンボーディングを受けます。彼らの主な役割は監視、アラート応答、簡単なトラブルシューティングなどの日常的なタスクに関わることです。

  • 中級 SRE: 経験を積むと、システムの設計やアーキテクチャに関する課題、大規模な障害のトラブルシューティング、システムの最適化など、より複雑なタスクを担当するようになります。

  • 上級 SRE/リードSRE: リーダーシップの役割を担い、チームの方針や戦略を策定することに関わるようになります。また、クロス機能的なチームや組織とのコラボレーションを主導し、大規模なプロジェクトを成功に導く責任を持つことが期待されます。

  • SREマネージャー: SREチームの管理や組織全体の信頼性の戦略を策定・実施します。マネージャーとして、チームの成長と育成、リソースの配分、予算管理なども行います。

7-2.今後の技術的トレンドとSREの進化

    1. 自動化の増加: 自動化ツールやテクノロジーは進化を続け、SREはこれらのツールを使用してルーチンタスクの効率を向上させることができます。
    1. AIと機械学習の導入: AI技術を利用して、異常検知、トラブルシューティング、自動修復などのタスクをより効果的に行うことが期待されます。
    1. セキュリティの統合: セキュリティはますます重要になり、SREはDevSecOpsの考え方を採用して、開発と運用のライフサイクル全体でセキュリティを確保することが求められます。

8. コンクルージョン

8-1.SREの役割と価値の再確認

SREの主な目的は、システムの信頼性、可用性、およびパフォーマンスを最大化することです。

これには、監視、インシデント管理、トラブルシューティング、自動化、最適化などのタスクが含まれます。

SREはまた、開発チームと協力して、新しいリリースの安定性を確保し、システムの持続的な改善をサポートします。

8-2.クラウドテクノロジーとの関連性の重要性

クラウド技術は、企業がインフラを迅速に展開・拡張し、コストを最適化する手段を提供します。

SREは、クラウドの機能やサービスを最大限に活用して、信頼性と効率を向上させる役割を果たします。

また、クラウド技術の進化に伴い、SREは新しいツールやサービスを採用し、システムの運用を最適化する必要があります。